英語のコーチングだけではなく、日本語を学びたいという海外の方にもトレーニングを行っているAyanoさん。海外で実際に使える英語の習得法や、それを教えるに至るまでの想いを伺いました。
インタビュー相手
乾 綾乃 (Inui Ayano) Do College/Japanese 英語/日本語コーチ
ブライダル企業に就職後、NPS部門全国2位を獲得。その後オーストラリアへ渡豪し日本語講師の資格を取得。現在はオンラインにて、主に日本のIT業界に携わる外国人への日本語コーチングを行なっている。また、英語学習スペースDo Collegeの運営に携わり、海外への留学、英語によるIT学習など将来に繋がる英語力の習得を目指した英語コーチングも行なっている。
よろしくお願いします! 今日はAyanoさんにインタビューをさせていただくということで、とても楽しみにしておりました。
はい、私も楽しみにしておりました!
よかったです!
これまでいくつかのプロジェクトでAyanoさんとご一緒させていただいておりますが、改めてAyanoさんが何者なのかということ、簡単な自己紹介でお聞かせください!
はい。私は神奈川県の大和市で、日本語と英語の学習スペースのマネージャーをしております。学習スペースという名前の通り、日本語を学ぶ方と英語を学ぶ方…即ち海外の方と日本人の方がいらっしゃるのですが、皆さんご一緒に勉強していただいてます。なぜかというと、私自身がオーストラリアに行った際の経験で、ただただ教科書を読み、それを覚えていくだけでは、全く通用しないということが分かったからです。
”使う英語”を習得すること
これは皆さん、海外に行った方は”あるある”だと思うのですが、聞き取ることもできないし、自分が言いたいことも言えないというところにとてももどかしさを感じました。そこで、日本の方が海外に行くのに何が必要かを考えた結果、“使う英語”を学ぶことだと思いました。毎日継続的に英語を使う習慣を付けていただけるようなスペースを作りたいと思い、今は大和市を中心にやらせていただいてます。
ありがとうございます。日本語を学びたい方、英語を学びたい方、どちらの方々にも適するスペースというのが素晴らしいと思います。
他にも、言語のコーチングというアプローチでサービスを提供されている点でも詳しくお伺いしていきたいと思っております。
言語を使うこと、実践することが大切だというメッセージがありましたが、具体的に、ご自身の経験から言語のコーチをされている中で、どのような形でそのことを表現されていますか?
自分も体感しましたが、皆さん本から英語を始める際、フレーズを覚えたり、文法だけを勉強して「なんとなく喋れるだろうな」と期待して行くんですけど、やはり自分の考えが言えないという方が多いんじゃないかと、感じるんですよね。
英語で自分の言葉を表現できるように
自分の考えが言えないとはどういうことですか?
訊かれたことに対して自分の意見を言わなければ、という時に、それを咄嗟に英語に訳せるかと言ったら、やはりすぐには難しいんです。日本の教育上ですかね、私も経験したのですが、そんな方が多いというイメージが強かったです。ただせっかく海外へ行ったなら、自分の言葉で相手に伝えるのがベストなので、海外で英語を使うことを第一に想定して、自分の言葉で表現できるようにと、皆さんにお伝えして勉強していただいてます。
まずは日本語と英語の違いを理解すること
実際に海外に行く・実践の場があるという場合も、そうでない場合も、英語を話す上での基本的な準備は、日本国内にいながらも出来ますよね。
そのような準備を行う方に対して、アプローチとして大切にしていることや「こういうことをすると効果的です」というポイントはありますか?
初めは”文法の流れ”と言いますか、”型”の、日本語と英語の違いを知るところから始めています。簡単に言えばまずは日本語と英語の違いを知るというところが大事なのかなと思っています。
その違いというのが何かというと、まずは文法の流れが違いますが、そもそも日本語をそのまま英語にしようと考えると、一向に自分の言いたいことを言えるようにならない、伝わるようにならないんじゃないかと感じているんです。日本語の難しい表現を、そのまま訳そうとされる方が多い気がします。
例えば「薬を摂取する」だと、「摂取」にすごく悩まれます。「摂取って英語で何だっけ?」ではなく、「摂取って何だろう」「摂取するって簡単に言うと何だろうね」と考えること。「摂る」ということだよね、と考えつく流れをまずは知って、それを日本にいる時に定着させておくということが大事だと考えています。
ありがとうございます。すごくよく分かりました。母国語の言語レベルですが、僕は今36歳なんですけど、36歳の日本語レベルの脳に合わせて、英語でいきなり考えようとしても絶対についていかないですよね。
僕は英語を考えるときは、まずは10歳くらいの英語の脳にして考える、というようなことをしてるのですが、そのスイッチを母国語の脳レベルのまま外国語に行こうとすると、すごく苦労するという話ですよね。
その通りです。海外に行ったらどうにかなるだろうという話ではなくて、これはトレーニングが必要な箇所だと思います。日本人が大人になってから英語を学ぶとなれば、母国語の日本語が先決していて日本語が邪魔になってしまう可能性があります。ただ、日本語をより簡単に考えて英語で話すというトレーニングができれば、海外でもどんどん使える英語を身に付けていただけるんじゃないかと思います。
日本語と英語の違いを知る
Ayanoさんの場合、日本語を学びたい海外の方々をコーチすることもあるじゃないですか。共通している部分だったり、逆に日本の方が英語を学ぶときと大きな違いとして見えるところってあるものですか。
同じところは、やはり日本語と英語との違いを知ることですかね。
まずは、日本語というのはこういうものというカルチャーや背景に触れることが大切、ということですよね。
そうですね。単純に文の並びが全く違うというところも違いとしてはありますね。あとは日本語ならではなのですが、文法としての主語はあるのですが、主語がなくなる文章が多いですよね。「私」や「あなた」が省略されたり。主語が省略される経緯についてはまず、「文化的背景もあるんだよ」というところからお伝えさせていただいてます。
そういう観点もあり、正直、日本語と英語をお伝えさせていただいてる側からすると、日本語のほうが難しいんじゃないかなと感じる部分が多いですね。
海外の方が日本語を学ぶほうが難しいということですよね。
はい、ゲッシングがすごく必要になると思います。
なるほど。とても興味深いです!
日本人には思いやりの文化が根付いており、それはいい意味で言うと謙虚なのですが。会話の流れで考えると、「誰が主語なのか」「それはどっちの大丈夫なの?」と分からなくなってしまいますね。
あぁ……なるほど。
英語ははっきり主語も言ってくれるし、何を指してるのかが分かりやすいんです。対して日本語は、応用が必要です。相手と話すことになった際、どれのことを言ってるんだろうと察知すること、ここが結構難しいところだと思います。
英語をネイティブにしている方が日本語を学ぶときに、「私は大丈夫です」という言い方になるけれども、日本人だったらただ「大丈夫です」というようになりますよね。
そうです。
“I”の部分を言わずとも通じさせてる日本語の文脈があるからですね。そうやって考えると、使う脳の部分も違うんだろうなという気もするし、日本語の場合は、会話をするときに推測して、言葉じゃない部分から何かを読み取るという能力を発達させなきゃいけないイメージがありますね。
逆に言うと、むしろ日本人はコミュニケーション能力高いと思いますけどね。
面白いですね! なるほどね、そうですね。
お話を聞いてそこに合わせて「こういうことかな」というように話が広がっていきますよね。
空気を読む日本人、それって何?という外国人
脱線かもしれないけど、他の方とお話していても、日本人のスピリットや、サービス等もかゆいところまで手が行き届いてたり、ここまで考えて”おもてなし”やサービスをしてくれたり、様々なイマジネーションがあるという内容が出てくるのですが、この話に通じると思います。
かゆいところに手が届くっていうのはこれは日本人の性質上、結構有利なことだと思っています。「相手はこうしてほしいかも」というゲッシングが上手いんじゃないかなと思いますね。
一方で、英語でコミュニケーションを取り表現するとなった際に、複雑に考えすぎる、難しく考えすぎるというところもある意味繋がっていますよね。それが習得におけるネックになっていたり、本来であれば持たなくていいハードルになっている可能性もあるんだなと思いました。
そうですね、日本人はそこまでゲッシングもしますし、「相手がどういうふうに思うかな」ということも感じ取られる方が多いので、「ちゃんと話さないとまずい」と思う方もいらっしゃると思いますね。
なるほど、確かに。
「全部完璧に伝えられなかったら恥ずかしい」という気持ちだったり、「相手に伝わらない、やばい!」と思ってしまう方は、日本人に多いと思います。
海外の方のほうが「とりあえず言っちゃえ!」という精神は大きいなと感じます。
Ayanoさんとご一緒させていただいたとある日、日本語と英語どちらも習得したいというメンバーがいる企業様のプロジェクトでも、海外メンバーの方にヒアリングをしていたら「空気を読むって何ですか?」と散々言われましたよね。
逆に日本に長く住んでいる海外メンバーで「この人めっちゃ空気読んでくるやん!」という方もいらっしゃったので、そういうところを感じ取れる繊細な方は、日本のカルチャーや日本人と通じる部分があるなと感じたことがありました。
本当にそうですね。海外の方で日本に馴染んでる方は、日本の文化が本当に好きなんだろうと思います。
どんどん海外へ挑戦してほしい
では、日本語や英語を習得するプロセスを支援されたり、ご一緒される中で、Ayanoさんがこれから先、どんな思いでどういうことをしていきたいと考えているのか、聞かせていただけますか?
私は常々“使う英語を”と言っているのですが、そこで「使うってどこで使えばいいの?」という方がどうしても出てきます。海外に行こうと思ってもすぐに行けない方もいらっしゃる中で、ずっと練習ばかりになってしまっては、実用的ではないと思うんです。
ある程度日本でのトレーニングを終えた方に、どんどん海外への挑戦を増やしていって欲しいというのが、私の中で1つのミッションだと思ってます。
ですので、そのための留学サポートも行っています。
例えば、英語をある程度習得されたIT関連の方に、海外のエンジニアさんにお願いして、英語でITを学んだり、英語を使って違う技術を学ぶ挑戦を経て、生の“使う英語”を習得できるような流れをもっと増やしていきたいと考えてます。
これは逆もそうで、日本に少しでも興味のある方、もっと日本を身近に感じて「日本に行ってみたい」「挑戦してみたい」という方に対して、実際に日本にきてこちらの教室にきていただいたり、別のところにでもインターンシップで行ったり…そういう流れをどんどん増やしていきたいなと考えています。
なるほど。
個人的に、僕はいつもスポーツで考えるんです。自分の性格上、練習をたくさんやるよりとりあえず試合をやって、その上で必要なことだけ練習するぜ!と思ってしまうタイプで。でもほとんどの日本の方は真面目で「ちゃんと練習しなきゃ」と、コツコツやられる方が多い印象があるので、その良さを活かしながらも、Ayanoさんがおっしゃってた実践の場を試してみましょうよっていう機会をね……!
そうですね。せっかくならそこに繋げていただきたい、本当の面白さを感じてほしいと思います! その上で、初めての場合や慣れない場合はちょっとした勇気が必要だったり、踏み込んでいくことに躊躇することも多いと思います。そういうところを支援することは、とても意義があることだと私は思っております。
ビジネス英語を習得するには
最後に、これまでのお話で、企業や経営層の方々が資金調達のための英語のプレゼンテーションを学ぶ中で、まずは簡単に自分や会社のことを英語で表現できるようサポートしていらっしゃるという内容がありました。
そういった企業やビジネスという文脈で、Ayanoさんが気づいたことや、ビジネスで英語を使いたいという方にメッセージがあればお願いします!
ビジネス英語を学ぶ方とご一緒させていただいて改めて感じるのが、「ビジネスでも変わらないぞ」ではないですけど、日常英語を話せるようになりたい方と根は同じですね。
先ほど日本語を英語に変換する時に「ちゃんとしなきゃいけない」と思ってしまって、なかなか英語を使えないという人が多いのではというお話をさせていただきました。その中で「とりあえずやってみよう」というところが、ビジネスになると、より躊躇される方が多いと感じます。「こんな感じで言っていいのかな?」という不安から「自分は英語は話せないんだ」という考えに流れてしまうと思うんです。
そこをいかに頭を柔らかくして、シンプルでいいから伝えるということにフォーカスできれば、ビジネスでも活用できる英語を身に着けていただけるだろうと感じています。
確かにそういう傾向はあるかもしれないですね。
今後も、テーマを決めていきながら、「語学習得の機会を作っていくこと」「実践の機会を作っていくこと」という文脈で、Ayanoさんにたくさんお話を伺っていきたいと思います。
本日はAyanoさんにインタビューということで、興味深いお話を聞かせていただきました。お時間をいただきありがとうございました!
ありがとうございます!
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