2019.06.19
インタビュー

Hero Interview 004「英語で生の感覚を伝える」LECTEUR五十嵐氏が語る世界に通用する日本流スタイル提案

株式会社LECTEUR CEO YUKI IGARASHI

Hero’s PROFILE

大手セレクトショップの販売員を経験後、オーダーメイド紳士服を販売する完全予約制のプライベートサロン「LECTEUR(レクトゥール)」を2017年6月に立ち上げる。お客様へのスタイル提案から、アパレル業界の働き方の改革に取り組む。

 

今日はありがとうございます。はじめに五十嵐さんと「LECTEUR(レクトゥール)」について教えていただけますか。

 

現在は、受注生産品としてスーツやジャケット、ビジネス靴や在庫品のネクタイやチーフといった小物類の販売のほかに、販売員の労働環境の改善活動をメインに取り組んでいます。この活動に取り組み始めたのは、前職でセレクトショップの販売員をしていた頃、実務の内容と実際の給与水準があまりにもミスマッチだと感じたのがキッカケでした。
プロフェッショナルの販売員だとしても、いくら商品を販売して売り上げに貢献しても給与が上がらないというのがアパレル業界の現状でした。そのような現状ゆえに、それこそ”ヒーロー”と呼ばれるようなプロフェッショナルの販売員が、他業界へ転職してしまう人材流出が起きています。

 

「目的を達成する手段」として必要なのが「販売員の働き方改革」

 
これは、アパレル業界全体の責任として、改善して行かなければならないと思い、販売員がフリーランスで仕事ができるよう、そのプラットフォームを用意して、稼げる仕組みを整えてあげる。そうすることにより、すごい稼げる訳ではないが、今よりも良い生活ができる販売員が増え、下の世代に夢を見させてあげることができる。そう考えました。
次の働き手が増えないと、業界自体が潰れてしまう と。
シンプルに顧客満足度を追求していきたいが、今の時代において「その目的を達成する手段」として必要なのが「販売員の働き方改革。従業員の満足度向上」なんです。

 

なるほど。販売するだけでなく、「販売員の働き方改革」を業界全体へ普及させようと考えているのですね。

 

はい。将来的には、業界全体の販売員の労働環境改善を目指し、外部の大手アパレル企業などへコンサルティング業務を行いたいと考えています。
まずは現段階として、僕のお店に関わってくれている販売員たちの生活水準を上げていくことに取り組んでいます。
そういった活動が上手く波及すれば、アパレル業界の構造改革に繋げられると考えています。
京セラの創業者 稲盛和夫氏の言葉で「ES(従業員満足)とCS(顧客満足)は両輪で」という言葉がありますが、まさにそうで「CS」を上げるなら、「ES」を引き上げないといけないと思います。今後、僕らの取り組みで「売れっ子販売員」のあるべき姿は確実に変わっていくと思います。

 

 

しかし、難しい一面もあって、販売員がフリーランスとして活動していくということは、販売員が営業職になったといっても過言ではないので、そのマインドセットが上手くできる人とそうでない人とでは、働き方も変わってくると思います。これついては、いろいろな課題があり、暗中模索ですね。

 

五十嵐さんご自身はいま具体的にどのような活動を主にされているのですか?

 

お客様と関われる立ち位置が大好きなので、今も店頭に立って接客していますが、他の案件も進めていかなければならないので、現場はスタッフに任せていくつもりです。
現状でいうと、個人の実力だけで勝負できるシステムが、アパレルの販売員業界にはないので、フリーランスで働く販売員を増やして「こういう働き方があるんだよ」ということを業界に認知させることを行っています。それが広まってくると、僕のお店で働きたいと思う優秀な販売員が集まってくると考えています。働く上でも、良い条件がそろっているので、アパレル業界を離れる理由がありません。
優秀な販売員が増えていった時に、その優秀な販売員を他のショップへ派遣することもできます。

 

お客様は、「どこで買うか」「何を買うか」ではなく、「誰から買うか」ということを強く求めている

 

たとえば大手企業と組むことにより、お客様はスタイリング費用を支払うことなく優秀な販売員によるスタイリングが体験できる訳です。僕らは依頼元の企業からキックバックを受け取るシステムが理想形ですね。
そうなると、One to One のサービスを提供できるセレクトショップになり、イーコマースのリアル店舗のような状態になる。専門性の高い商品を販売する店舗にとっては、新たな付加価値が創出されます。今、お客様は、「どこで買うか」「何を買うか」ではなく、「誰から買うか」ということを強く求めてきつつあります。なので、僕らのようなフリーランスで活動する販売員が必要となる機会は増えていくはずです。

 

海外では、どういったお仕事をされているんですか?

 

最近だと、上海で僕のパートナーと一緒に、オーダー会を2日間開催しました。僕のパートナーが現地でお客様を集めて、僕は生地を持って行き、スーツなどの受注会をするといった流れです。
今回いらっしゃったお客様のほとんどは、現地に住んでいる方か北京から来られた方でした。

 

 

日本と海外のファッションはどのような違いがあるんですか?

 

イタリアやアジア各国を訪問して思うのですが、品揃えやショップ作りのディレクションまで、日本はすごく洗練されていると感じます。セレクトショップや百貨店に関しては、日本ほど洗練されている国はそう多くはないですね。
日本で販売している商品の質も高いです。
実際に、イタリアの取引先が、僕らが取り扱う洋服を見て「なぜ、この生地を使い、このデザインで、この値段で販売できる?」と不思議がるくらいにクオリティは良いですね。また、中国や韓国、タイなど、近年では商品クオリティも上がってきています。そういった国が、どの国を手本にしているかというと、日本なんです。
日本はファッション先進国として、アジア圏でトップを走っています。日本国内での市場規模は縮小傾向ですが、ヨーロッパの各国からは日本は大事な取引国の1つと認められています。今後は、世界で認められるハイクオリティな日本の商品やノウハウをアジア圏で広めたいと思っています。
この目的を達成するのに必要なのが”英語”なんです。

 

実際にお仕事では、どのくらいの頻度で英語を使う機会があるんですか?

 

去年は月1回ペースで、北京にある提携店舗で仕事をしていました。そこでのコミュニケーションは、基本は英語でしたね。今年は、イタリアや上海、北京でも仕事をしていますね。僕らもface to faceの仕事を行っているので、英語で話して意思疎通ができることと、スマートフォンの翻訳アプリで変換してから話すとでは、お客様の温度感が違うし、それによってお客様が得られる満足感も違ってくると思います。
なので、ジェスチャーを交えてでも、拙い英語でも、できるだけ英語で生の感覚を伝えるということが大切だと海外で仕事をする度に思います。そういった思いもあって、Central Figureで英語学習のレッスンを受けようと思いました。

 

他にも英語学習サービスがある中で、なぜCentral Figureを選ばれたのでしょうか。

 

英語を独学で勉強できる方もいるかもしれませんが、相当意志が強くないとできないと思いますし、僕の場合は日々の業務に忙殺されて、勉強が疎かになっていました。

 

少しずつでも英語の勉強を継続することが、上達への近道

 

Central Figureではレッスンが定期的にあり、絶対に英語を勉強しなければならない環境を作ることで、英語に触れ続けられることに魅力を感じました。「明日、レッスンの日だ!?」ってなると、テキスト見て予習しています(笑)
これは大切なことだと思っていて、少しずつでも英語の勉強を継続することが、上達への近道だと感じています。また、レッスンをお願いすることで、強制的に英語を学ばなければいけない環境を作れます。
あと、直に講師に英語を教えてもらえるので、テキストの解説だけでは理解できなかったことでも理解できるし、英語を勉強する上でのアドバイスがもらえる。これはすごくアドバンテージになっているなと思っています。

 

 

日本のお客様への接客と、中国のお客様への接客とでは、接客方法も異なりますか?

 

違いますね。日本人と比べ、中国の方は大陸系のガッチリとした骨格になるので、ヨーロッパ人の骨格と似ています。なので、お尻が高い位置にあり、パンツを綺麗に履けます。そういった違いを把握しながら、接客をするようにしていました。
洋服の好みでいうと、日本でいう「粋(いき)」みたいな感覚が、まだ理解してもらえないのが現状です。とにかく光る生地やマスタードっぽい黄色、朱色っぽい赤といった縁起の良い色を好みます。あとは、白いパンツを履いている人は信用できないなんて仰る方もいましたね(笑)

 

直近の上海訪問でも英語での接客を実践されたんですか?

 

はい。お客様とは、英語で話すようにしました。
洋服のオーダーには「補正」という項目があり、ウエスト幅の調整などの”横”の考えのほかに、お客様の体勢が猫背だったり、いかり肩、なで肩、お尻の角度とか、こういったことを”縦”の考えというものがあります。”縦”をしっかりと作り込むことにより、綺麗なラインに仕上がるので「あなたの体勢はこうだから、これがオススメだよ」とか「サイズはきついですか?」といったフィッティングの話題について、英語でコミュニケーションしました。

 

英語で話すことで、お客様の反応も違いますか?

 

以前は、海外での仕事を一緒に行っているパートナーに通訳をしてもらい、お客様と会話をしていましたが、特に不便さは感じませんでした。しかし、自分で話せた方がお客様との距離感が近くなり、信頼関係をスムーズに築けると今回感じました。お客様によっては、「お任せでいいよ」と言ってくれる方もいましたね。

 

今回、実際に英語での接客にチャレンジしてみて「これがもどかしい!」と思うようなことはありましたか?

 

接客・採寸で使う英語を、事前に準備して覚えてきていたので、業務においては問題ありませんでしたが、日常会話になると途端に英語が出てこなくなるので、もう少し英語を話せるようにならないといけないことは自覚しています。
今回感じたことは、もっとスムーズに英語を話せるようになれば、お客様の購入単価も上がるということです。僕が勧める洋服の点数も増えてくると思いますし、スーツ1着で終わっていた人が、もしかしたらジャケットも購入してくれるかもしれません。英語でお客様の悩みを聞き出せれば、次の提案もできます。

 

お客様の声になっていない需要を聞き出すことが仕事だ

 

通訳してもらうこともできますが、会話のテンポが悪くなりますし、的確なニュアンスでお客様に伝わっているかも分かりません。
結局は、お客様の声になった”需要”は”真の需要”ではなく、お客様の声になっていない需要を聞き出すことが僕らの仕事だと考えているので「お客様がお求めなのは、これですよね?」「これだよ。これを探してたんだよ」といった会話が、お客様との間でできることが重要だと思います。英語だと、顕在化しているお客様の要望を聞いて、それに対してのアウトプットで精一杯になっているので、そこがもどかしい部分です。

 

今後、日本のみならず世界で挑戦したいことは?

 

日本でも世界でもやりたいことは2つあります。
1つ目は、販売員の働き方を改善して、その仕組みをアジア圏に輸出することです。
例えば、中国のショップでは、良い商品をたくさん取り扱っていますが、販売員のスキル不足によって売上が伸びない、在庫がはけないといった問題があります。
そういう問題が発生した時に、僕らが持っているノウハウが役立つのではと考えています。

2つ目は、ハイクオリティの日本の商品を海外にどんどん打ち出していきたいです。
今は、アジア圏でもイタリア製の生地で洋服を仕立てるお客様もいるので、日本のハイクオリティ商品を出すことで、新たな商圏を獲得できると考えています。

 

僕の弟は、フルオーダーのパンツ屋さんを経営しているのですが、弟のお店で仕立てたパンツを履いているお客様が世界各地にいます。
将来的には、小売業としての僕の会社とメーカー業としての弟の会社をドッキングさせ、僕らのブランドとして卸を行うことで、海外に挑戦したいと考えています。
そして、最終的には販売員の教育機関を設立するということが僕の目標です。以前、北京で仕事をした際に、現地の方で「販売員の教育機関」という考えに興味を持ってくれた人がいました。その人も、職人や販売員の勉強会を開きたいと思っている方で、僕が「将来は販売部門の学校を設立したい」と話したら、「それいいね!」って言ってくれて、すごく盛り上がったんです。
次回、北京に行った時はそういった話題を英語で話せるようにしたいですね。

 

引き続き英語を通じてのチャレンジをご一緒できるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました!

 

 
 

(インタビュー:高橋佑樹/ライター:若林健太)

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